キミのとなり。
それ以来、私と仁の関係は少しづつ変化し始めた。



朝顔を合わせると仁は軽く『うっす』と、あいさつをするようになった。


…と言っても、相変わらず顔は笑ってないけど。


会社に着いて、デスクに向かい今日もいつもの作業に取り組む。


はぁ~……


ちょっと休憩~。


仕事の合間に飲み物を買いに自販機へ向かった。


すると、自販機の前で弘人が同期の社員と話しているのが目に入った。


よぉーし、そおっと行って驚かしちゃお!


息を止めて、ゆっくり忍び足で近づいた。


だんだん近づくにつれて、二人の会話が耳に入ってきた。


「お前、最近千秋ちゃんとはどうなの?」



ん?


私の話し?


思わず足を止めた。


「どうって……別に。」


弘人は素っ気なくそう答える。


「何、うまくいってねぇの?」」


「あいつさぁ……」



ドキドキした。



初めて聞く弘人の本音だったから。



『最近うざい。』


え……


「おまえっ…そんな言い方ねぇだろ。」



「だって顔を合わせりゃ結婚結婚だよ?!」


弘人は煙草をふかして煙たそうな顔でそう話す。


「俺らまだ22だよ!?結婚なんて考えてねぇっての。」


えっ……


どういうこと!?


だってあの時。



『俺お前とちゃんと結婚考えてるよ?それでもダメか?』


そう言ったよね……。


「それにあいつまだやらせてくんねぇし…、もうたいがいダルイっ。」



弘人はまるで別人のようだ。



私の知ってる弘人はそんな事言わない…


いつも優しくて、


穏やかで、笑ってて……


大人で…



でも、きっと



嘘……だったんだね。



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