キミのとなり。
「あっあのっ…」



私が言いかけた時、鞄から煙草を取り出し、手元のライターで火を着けながら煙たそうな顔をした佐田さんが口を開いた。



「昨日、仁が事務所に来て私に土下座したわ。」



えっ―…



「仁が…?」



土下座……?



「あなたとの事を認めてくれって。きちんとマスコミに公表させてくれってね。」



口から煙を吐きながら、さも苛立っている様子でそう言った。



「えっ…」



「まったくっ…あなた達はどこまで私を困らせれば気が済むの!?」



驚いて声も出なかった。



「あなたも、仁に土下座なんかさせて何も感じないの!?マイクロシティのジンよっ!?」



また怯みそうになった。



だけど……



「感じません。」



そう、ハッキリ言った。



佐田さんは手を止めて、思いもしなかった私の反応に驚きを隠せないようだった。


「私も同じ思いです。それで、認めてもらえるなら今ここでだって土下座します。」


「……。」



呆気にとられた佐田さんの手元から、煙草の灰がテーブルに落ちた。



そうだよ。



そこまでしてくれた仁の思いを私が無駄にするわけにいかない。



もう一歩も引かないよ、私。


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