キミのとなり。
長い階段を幾度も上がって行く。



そして、突然佐田さんが足を止めた。




「ここから見てて。」



「え…?」



そこは、ちょうどライブが行われる会場の3階に当たる場所で、ガラス越しに客席を一目で見渡せる。




「わぁースゴッ!」



若菜ちゃんはガラスにへばりついて歓喜の声を上げる。



「開演は13時からよ。また後でくるわ。」



佐田さんはそう言うと、私達を残してその場を去った。



「先輩超ラッキーですね!特等席ですよっ!」



「……うん。」



後ろのベンチに腰掛ける。


「あの人、案外いい人ですねー。」



「……。」



わからなかった。



どうしてこんなことしてくれるのか…。



佐田さんは、何を考えてるの?



――13時



いよいよ開演になり、会場は一気にヒートアップ。



「先輩見てくださいよ~人がありんこのようですよ!よくこんなに集まりましたね。」



「うん…」



その時、突然会場にもの凄い爆音が響く。



それと同時にステージの脇からスモークが大量に放出し、マイクロシティが登場した。



《ギャー!!》



すっ凄い声。



人が波打っている。



ガラス越しでもその歓声のすごさが伝わるぐらいだった。



そうこうしている間に一曲目が始まった。



あっこの曲…



聞いたことがある曲だった。



確か昔、地元のライブハウスで……。



ステージのジンに目をやる。



マイクを握りしめ、楽しそうに歌っている。




まさか、こんなところから私が見ているなんて思いもしないだろうな。



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