キミのとなり。
間奏に入り、汗を流しながらギターを弾くジン…



あぁー…かっこいい。



思わず頬を赤めた。



《ケンチャ~ン!!》



会場のどこかから沸き起こったケンチャンコールを聞いて、若菜ちゃんは頬を膨らませる。



「ケンチャン言うなっ!」


「ハハハッ!」



素直で自分に嘘がなくて若菜ちゃんは本当にかわいい。



「ケンチャ~ン、私ここにいるよ~!」



懸命にガラスの向こうのケンチャンに大きく手を振っている。



その姿を目を細めて見ていた。



ニ曲名…



すこししっとりとしたバラードに変わり、会場も体を揺らして聴き入っている。



あんなに小さなライブハウスから始まって、



今やこんな大きな会場を超満員にできるんだもん……



すごいよ、仁は。




ここにいるみんなが仁やバンドのみんなを認めてるんだよね。



大丈夫なのかな…本当に私なんかがそばにいて。



「………。」



だめだ…



また悪い癖が出て来た。



“ドサッ”



力無く後ろのベンチに腰を下ろす。



それに気付いた若菜ちゃんがこちらを振り返った。



「ん?どうしたんですか?」



「……ううん。ちょっと疲れただけ。」



ばかっ。



ここまで来て何余計な事考えてるのよ!



仁は迎えに来てくれるって……



私じゃなきゃだめなんだって



そう言ってくれたんじゃない!!



もう、余計な事考えないって誓ったじゃない!



必死に自分にそう喝を入れた。



その時、後ろから声がした。

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