キミのとなり。
不器用な言葉
体に力が入らない……


重い足取りで家へ帰った。


“ガチャンッ”


部屋の鍵を開けようとした時、物凄い勢いで隣りのドアが開いた。


慌てた様子で出てきた仁は、胸に大事そうに子猫を抱いている。


私はいつになく取り乱した様子の仁に声をかけた。


「どっどうしたの?」


仁は震える手で子猫を私に見せた。


「ぐったりして……動かない。」


「えぇ?!」


確かに子猫は仁の腕の中で全く動こうとしない。


「何があったの?!」


「帰ったらぐったりしてて。」


常に冷静沈着な仁がまるで別人のようだ。


「行こ!病院!」


私は呆然とする仁の腕を引いて走り出した。


無我夢中で近くの動物病院へ急いだ。


病院に着くと、仁は子猫を獣医に預け状況を説明して子猫は検査室に運ばれた。


私と仁は緊張した面持ちで検査が終わるのを待ち合い室で座って待っていた。


しばらくして獣医が子猫を連れて出てくると、検査の結果を仁に報告する。


『肺炎ですねぇ、しばらくこちらで預からせてください。』


病院側の話しによると、子猫はストレスに弱い生き物らしく、そのせいで風邪をこじらせて肺炎を起こしていたらしい。


2週間程で退院できるとの事だった。


「お願いします。」


私の横で、仁は獣医に頭を下げた。


意外な光景だった。



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