キミのとなり。
病室から聞こえた騒々しい声に、様子を見に来てくれたんだ。



「ストーカーはあんまりやろ。」



携帯を握り締めたままの佐田さんが桜井君の方へ向きを変える。



「…誰あなた。」



「俺?……まぁ、そこの二人の見届け人、とでも言っておくわ。」



「はぁ?」



桜井君は佐田さんに睨みを利かせながら少しづつ歩み寄る。



「……俺だけちゃうで?この二人を見守って来た人間は他にもいっぱいおる。それがストーカーじゃないなによりの証拠やと思うけど?」



あまりの眼力に佐田さんは黙り込んだ。



「あんた人を好きになったことないんか!?」



「…なっ何言ってるのよ。」


「あんたも女やったらわかるやろ…愛する人が大変な時、傍にいたいと思うのは当然の事やって。」



桜井君……



「バカらしい…」



佐田さんは吐き捨てるようにそう呟いた。



「いい?こっちはビジネスがかかってるのよ!恋だの愛だのそんな低俗な話し眼中にないのよ!」



「なんやとぉ!?」



「…さっ桜井くんっ!」



殴り掛かりそうな勢いの彼に駆け寄り、必死に体を押さえた。



「とにかくっ…今日は帰ります。……また、」




『明日来ます。』



私は、揺るぐことのない思いで佐田さんにそう言った。



「……先輩。」



呆然としている佐田さんにゆっくり歩み寄り、手に持った花束を差し出す。



“ガサッ”



「これ、仁に。」



「……。」



佐田さんに花束を手渡すと、ゆっくり頭を下げてまだ怒り浸透中の桜井君の背中を押して病室を後にした。



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