キミのとなり。
私は自分の思いをみんなに打ち明けた。



1番最初に口を開いたのは弘人だった。



「…いいんじゃないか?千秋がそうしたいと思うなら。」



弘人……。



「そうですね……。うん……、正直、先輩が居なくなるのは寂しいけど。……うん、でも今の先輩には、そうすることが1番いいと……私も思います!」



若菜ちゃん……。



最後に一人、黙り込んだままの桜井君に目を向けた。


桜井君はコクンコクンと二、三度小さく頷く。



まるで何かを自分にいい聞かせているみたいに。



そしてこう言った。



「すごいやん…そんな大事な事一人で決めたなんて。」


そう言っていたずらに笑う桜井君。



私も、それに笑って返した。



鞄から“辞表”を取り出す。



「じゃー…行ってくる。」


三人は優しい笑顔で強く頷いた。


三人に見送られ、エレベーターに乗る。


5年間通い詰めたオフィスのドアを開けて、部長のデスクに向かい手に持ったそれを差し出した。


目を丸くする部長に詳しい事情を話し、決意が固い事を告げた。



困惑気味だった部長は、しばらくしてから渋々その辞表を受け取った。



「長い間、お世話になりました!」



深々と頭を下げてオフィスを後にした。



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