キミのとなり。
「ケンチャン…」



「大丈夫?」



「…あっうん、ありがとう。」



ケンチャンを見るなりその男は深々と頭を下げた。



「すいません、あまりにしつこいファンだったのでつい……。あっすぐに追い返します。」



そう言うと男はまた私の腕を掴もうとする。



「あぁー!いいのいいの。この子は特別だから。」



「やっ……しかし」



「佐田さん何時に来るんだっけ?」



ケンチャンがそう聞くと男はきょとんとしたまま答えた。



「えっ…と、確か今日は12時過ぎ頃だとお聞きしてますが。」



「12時過ぎね…」



ケンチャンはちらっとポケットから携帯を取り出し、時刻を確認した。



「あと1時間あるな。」



そう言ってニッコリ笑うと病室のドアを開けた。



「さっ、千秋ちゃん入って!」



「えっ?」



男は状況が把握できず、目を丸くしている。



「ケッケンさん、困ります!そんな勝手な事っ……佐田さんに知れたら…」



「俺が責任とるから。」



「やっ…しかし…」



「それでいいだろ?」



あまりのケンチャンの真剣な眼差しに男はついに黙り込んだ。



「千秋ちゃんおいで!」



「えっ…あっ、うん。」



私は男に少し申し訳ない気持ちで、ゆっくり病室へ入った。



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