キミのとなり。
「わっ別れたぁ!?」


給湯室に若菜ちゃんの声が響く。


「うん、もうスッキリ!」


わざと平気な振りをして弘人との出来事を若菜ちゃんに話す。


すると彼女は、すごい剣幕で怒り出した。


「ほんっと有り得ませんね!!」


「もういいんだ、考えたら腹が立つだけだし。」


「でもいいんですか?あの水原って子!呼び出して文句言ってやりましょうか!?」


「うううん、いい。そんな事しても虚しいだけだよ。」


「そっかぁ……でも!ほんっと最悪ですね!!神田さんもあの女も!!」


「……最悪だと思えば最悪になるし」


「え?」


「早くわかっただけでもよかったんだって思う様にした。」


若菜ちゃんは驚いた顔で私を見ている。


「先輩、大人ですねぇ。」


感心したように彼女が言う。


私は仁がくれた言葉を借りた。


仁が私に教えてくれた。


前向きに生きる事の大切さを……。


だけどまだ正直心は晴れない。


デスクについて仕事に取り掛かるが、全然手につかない。


体はとても正直だ。



それからしばらくは、会社でも弘人としょっちゅう顔を合わせなければならなくて気まずかった。


会社を休もうかとも考えたけど、逃げてるみたいでしたくなかった。


そして数日が過ぎ――


あれ以来元気がない私を気遣い、若菜ちゃんがある提案をしてきた。



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