キミのとなり。
「……。」



涙の向こうで、仁の目が開くのがわかった。



『仁っ!』



私とケンチャンはまた声を揃える。



そしてゆっくり仁の重いまぶたが開く―…



「…甲谷さんっ。」



「……仁っ!」



私達は眩しそうに目を細めてただ天井を見ている仁に言葉をかけた。



ゆっくり瞬きを繰り返し、次第に視点が定まり出す。


仁はボーッと病室を見回している。



状況が把握できていないんだ。



「…仁!わかる!?ここ、病院だよ?」



「……。」



その声を聞いて、やっと仁は私を見た。



「……仁っ」



5日ぶりに見る仁の透き通った瞳…



たった5日なのに、5年も10年も見ていなかったような気分だ。



仁はボーっと私を見たまま、またゆっくり瞬きを繰り返した。



うれしくてうれしくて……涙を拭うのも忘れて仁を見つめていた。



「仁…わかるか!?」



隣からケンチャンが仁にそう声をかける。



「……。」



何か言いたそうに少し口をパクパクさせている。



「バカヤロウ!…心配っ…かけやがって。」



ケンチャンは嬉しさの溢れた顔で、仁のお腹辺りを軽く叩いた。



「…ッテ!」



仁が初めて言葉を発した。


ただそれだけで…



そんな当たり前の事だけで、


胸がいっぱいになり、また涙を流した。



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