キミのとなり。
ハイテンポな一曲目が終わり、しっとりしたバラードが会場全体を包む。



汗をかきながらも、マイクを握りしめて唄い続ける仁を正面からずっと見ていた。



なんて素敵なんだろう。



この人に出会えて本当によかった。



大好きだな…って



そんな想いが次々に溢れて一人顔を赤らめていた。




――数曲目でまた曲はアップテンポに変わる。



私達は我も忘れ、その曲に合わせてまるで子供のように総立ちで盛り上がる。



こんなに時間を忘れるほど何かが楽しくて夢中になったのはいつぶりだろう。



辛かった過去を、全部忘れてしまう程だった。



はぁー、会場との一体感がめちゃくちゃ気持ちいい。



「せんぱぁい、ケンチャン超かっこよくないですかぁ~!?んもぉーサイッコウ!!」



私の横で体をくねくねさせながら若菜ちゃんは両目を×にして会場の歓声に掻き消されないくらい大きな声でそう話す。



ステージの上ではジンが、唄いながらメンバーの元へ歩み寄る。



ギターのアツシ、



ベースのショウゴ、



そしてドラムのケンちゃん。



楽しそうに、まるで少年のようにはしゃいでいるジン…



ずっと見ていたいよ。



あなたのその笑顔を……



そのまぶしく光り輝いた姿を……



ずっととなりで……。


楽しい時間はあっという間に過ぎ、気付けば色々あった今年も残りわずかになっていた。



「えーっ、気付けば時刻は午後11時半、新しい年を迎えるまであと30分。これがラストの一曲になりました!みんな今日は本当に最高に楽しかったです!ありがとう!」


ステージでジンがそう挨拶をして頭を下げると、緩やかなメロディーがゆっくり流れ出す。



あっ…この曲は。



聞き覚えのある曲だった。


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