キミのとなり。
「……だけど、離れれば離れるほど何故か辛くて。……そうすることが1番いいだろうと思ってそうしたはずなのに……全然納得できなくて。」



“シーンッ”



会場は、仁の話しにただ静かに耳を傾けている。




「やっぱり俺にはこいつしかいないんだって事を嫌ってほど実感しました。」



その辺りから、私の目には涙が溜まり始めていた。


「先輩~っ。」



そんな私の肩を抱きながら、若菜ちゃんも泣きそうになっていた。



桜井君もそして、全てを見て来た弘人や晃や晶子もただ優しく微笑んで私を見ていた。



仁……



私、あなたに出会って何度泣かされたんだろう……



悲し涙も悔し涙もいっぱい流した。



でもどうしてかな。



今は、嬉しくて流した涙の事しか思い出せないよ……


「それで、実は今日っ!!……彼女がこの会場に来てます。」



えっ―…



私はその信じられない仁の言葉に、顔面蒼白……



なっなななっ何言って―…


そんな事言ったら大変っ…


“キャー!!”



“ヒュー!!”



会場からは予想外の反応が沸き起こった。



みんなまるで自分の事のように楽しそうに立ち上がり拍手を繰り返す。



「えー…、呼んじゃっていいですかぁー?」



えっ…



仁が大きな声で会場のファンにマイクを向けた。



“イェーイ!!”



拍手は益々大きくなる。




何が…どう…なってるの?


まるで夢を見ているようなそんな感覚だった。



だって…有り得ないよ。



まだ最前列で、状況を把握できていない私にステージ上の仁はゆっくり目を向ける。



“ドキンッ!”



目が合っただけで、心臓が爆発しそうだった。



やっぱり……夢じゃない。



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