キミのとなり。
そして、仁が私の名前をよぶ。



「千秋……。」




聞き慣れているはずのその声に、何故か背筋がピンとなる。



口から心臓が飛び出しそうだった。



「来いよ。」



口からマイクを離すと、そう小さくはにかんで仁は私に手を差し伸べた。



「……えっ!」



全身硬直状態で、立ち上がる事もできなかった。



背中に感じるたくさんの視線―…。



「せっ…先輩!?」



固まって身動きすらしない私の肩を、横から若菜ちゃんが揺する。



「よっ呼ばれてますよ!」


それにも答えられない位、パニックだった。



「千秋ちゃんおいでっ!」


ステージの仁の後ろから、ケンチャンが顔を出してそう私に手招きをしている。



「…えっ……だっだって」


何!?これはドッキリ!?


意味わかんないよ~!



その内、挙動不振になる。


「先輩、ほら!行ってきいや!!」



横から桜井君も笑ってステージをツンツンと指差している。



「千秋っ!」



晶子がウィンクをひとつ…


「早くしろって!ほらっ」


晃もニタニタと私を見ている。



その後ろから、弘人が無言のまま力強く頷いているのが見えた。



もう一度ステージに目を向ける。



そこには、大好きな笑顔があった。



< 530 / 554 >

この作品をシェア

pagetop