キミのとなり。
“ガチャンッ”



「はぁ~ホテルに入るだけで一苦労だわ。……まぁ、スターの証拠だけど。」



「助かりました。」



仁は佐田さんに軽く頭を下げた。



“ギロッ…”



“ドキッ”



久々に佐田さんの鋭い眼差し…。



まさか…この期に及んで、結婚反対!!なんて言い出すんじゃっ。



やっぱりなかった事に!!なんて……言わない……



よね??



佐田さんはじーっと私の目を見つめながら、徐々に距離を詰めてくる。



思わず後ずさり……



そして冷や汗……



「……あっあの~」



ピンと伸びた佐田さんの人差し指が、私の目の前2センチの所で止まる。



「何よこれ!」



……へ!?



何!?なんかついてる!?


慌てて顔に手を当てる。



「…目の下にクマなんか作って!!」



あっ…



「あなたそれで仁の花嫁になる自覚あるの!?そんな顔でよくカメラの前に出られたものね!!そんなだから@&*+@〆∬∂…」



またいつものようにグチグチグチグチと延々続く佐田さんのお説教も、最近はうまく受け流す方法が身についた。



“コンコンッ”



「あっはぁい。」



グッドタイミングでドアをノックする音がして、係りの人が顔を出す。



「新婦様からそろそろご準備の方を…」



「あっ、わかりました~」


ケロッと笑顔に変わる佐田さん。



「あっ……じゃーまた後でね。」



ハァー助かった。



私は仁に手を振り、係の人の後に続いて部屋を出た。
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