キミのとなり。
「それでは、今からブーケトスの方を…」



係りの人がマイクを持ってそう言いかけた。



「あっあのっ!」



「はい!?」



「……あの、ごめんなさい。すごく勝手なお願いなんですけど。」



いきなり何を言い出すのかと、参列者や係りの人は目をパチクリさせている。



「……あの、渡したい人がいるんです!この…ブーケ。」



一瞬辺りがシーンとなる。


でも、私はどうしても彼女にあげたいと心に決めてきた。



私の次に幸せになって欲しいのはこの子しかいないから…。



「若菜ちゃん!」



「へっ!?」



急に名前を呼ばれて困惑する若菜ちゃん。



「すいません……みなさん、よろしいでしょうか。」


恐る恐る参列者の中の未婚女性に同意を求めた。



“…パチ…パチ…パチパチパチ!!



沸き起こる拍手と笑顔。


最後まで私らしいと、みんなが賛成してくれた。



「えーそれでは、新婦様たってのご希望により若菜さんっ。」



「…はっはい!」



「前の方へお越しください。」



若菜ちゃんは顔を真っ赤にして辺りをキョロキョロと見渡している。



「どっどうしよ~」



目立ちたがり屋の彼女にしては珍しくアタフタしていた。



私は若菜ちゃんにむかって手招きを繰り返す。



ケンチャンにも背中を押され、ゆっくりこちらへやってきた。

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