キミのとなり。
「ちょっ…おいっ!!」



仁の唐突な発言に、ケンチャンは焦ったように仁の顔を覗き込む。



私の腕の中で泣いて若菜ちゃんも状況を把握できていない様子だった。



「男を見せろ!」



仁はケンチャンの耳元でたぶんボソッとそんな感じの事を言った。



ケンチャンは珍しく冷や汗を掻きながら、辺りを見渡している。



みんながその状況に見入っていた。



「あっ…やぁーそのっ。」



ポリポリと頭を掻きながら言葉を探している姿が可愛かった。



私はゆっくり若菜ちゃんと立ち位置を変わる。



ブーケを握り締めた若菜ちゃんが、顔を真っ赤にしてケンチャンの顔を見上げた。



「えっ…とー……」



向き合う二人。



付き合いたてのカップルのようになかなか視線を合わせない。



「おいっ仁!」



仁に助けを求めてみたものの、後ろで仁は腕を組んでそっぽをむいている。



「あぁ…えっっとぉ。」



挙動不振なケンチャン。



そのうち、意を決したのかゴクッと唾を飲みながら若菜ちゃんの顔を覗き込んだ。



ガンバレ!!ケンチャン!



「あのっ……若菜ちゃん!」



「はっ…はい!」



二人とも背筋がピンとなっている。



案外、不器用なカップルだ。



「あっの…えっと…」



必死に言葉を探すケンチャン。



仁はうっすら笑いながら、まるで中学生が告白するみたいな雰囲気を醸し出している二人を見つめて楽しんでいた。



「えー…。」



この期に及んでまだ決心がつかない様子で、空を見上げているケンチャン。



もぉー早く言ってあげてよ!!



もどかしい!!



でも、よく考えるとこれが普通だろう……



あんな大勢の前でなんの迷いもなくこれを出来た仁は、やっぱりすごいのかもしれない。



なんて考えながらまた頬を赤らめた。



「ケンチャン…別に無理しなくて…いいよ?」



しばらくして、口を開いたのは若菜ちゃんだった。


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