キミのとなり。
震える足で駅を降りた。


女子高生の話していた事が頭を過ぎる。


“ジンがこんなに人気出る前から付き合ってたみたいでさぁ、その人が結構金銭的にも精神的にも支えてたんだって。”



“ライブハウスでもちょくちょく目撃されてたんだけど、最近見なくなったって噂だよ。”



“えっ何!?じゃージンは自分が人気出るまでずっと支えててくれた彼女を自分が有名になった途端捨てちゃったわけ!?”


そんなはずない……。


仁はそんな事しないよ。


私の知ってる仁は口は悪いけど…そんな事絶対しない。


でも私の胸は、不安で張り裂けそうだった。



ある日の仕事帰り――


マンションに帰って仁の部屋のドアの前で、思わず足を止めた。


ここの所、バンドのゴタゴタがあったせいか朝も夜も顔を見ていない。



仁、いるのかな……。



この前の女子高生達の話しを確認したいのにな……。


あっ…そうだ。



私はある事を思い出した。


仁に初めて会った時――


“うっせーくそ女っ”


あいつは確かにそう言って出て来たんだ。


あの時、部屋には間違いなく女の人がいたんだよね。


それは……“彼女”だったのかな。


“ガチャッ”


“ガンッ!”


「痛っ!!」


急に仁の部屋のドアが開いて私はおでこを強打した。


「……何やってんの、あんた。」


「はっはは……。」


頭を抱えて苦笑いする私を仁は呆然と見ていた。


「ストーカーか!」


「へっ!?」


「フッ……。」


仁は呆れ顔で微笑んだ。


なんでかな、笑ってくれるとホッとするよ。


「ちょっと散歩に行かない?」


私は寒い中、仁を公園へ誘い出した。


どうしても確かめたくて。


勇気を出して聞いてみることにした。


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