キミのとなり。
マンションの近くにある公園のブランコに腰掛けて考えていた。


仁に初めて出会った日の事を……。


なんて愛想のない暴言男だと思ったのが最初だったね。


こんな奴とこの先、毎日顔を合わせるのかって考えたら頭痛がする程憂鬱だった。


でも、仁がもうひとつの顔を持っている事を知ってそ唄声に魅了されて、その後明かされた意外な一面の数々に、私はいつもドキドキさせられてたんだよ。


私が弘人に裏切られた時、不器用な言葉で励ましてくれたのも仁だった。


いつも仁は『常に前を見ろ』って教えてくれていたんだよね。


部屋で唄ってくれた時もすごく胸にグッときたんだ。


自分でも知らない間に気持ちはどんどん膨らんで、もう少しで破裂しそうだよ。


過去に結婚していた事実を突き付けられても、揺るがなかった。


若菜ちゃんに言われて初めて仁がいなくなる日の事を想像したら、めちゃめちゃ寂しくて泣きたくなったよ。


私、もうめちゃくちゃ仁が好き。


だけど仁はいつか私の手の届かないところへ行ってしまいそうな気がする。


私が思ってる程、時間は残されていないとしたらちゃんと伝えなきゃいけないのかもしれない。


きっと後悔しそうだよね、このままじゃ……。



ふと気が付いたら、11時をまわる時間だった。



「すっかり遅くなっちゃった……早く帰ろっ。」


早足で公園を出たところで誰かに呼び止められた。


「おねぇーさんっ!」


振り返ると、二人組の男が立っている。


えっなに……?


「一人?」


え……?


ニタニタしながら近づいてくる。


何?ナンパ!?


「こんな時間に危ないよぉ?家まで送ってあげようか。」


「いえ……結構でっ」


そう言いかけた時、男の一人が私の肩に手をまわしてきた。


「……なっなんなんですか?」


耳元でその男が呟いた。


「かわいいねぇ。」


“ゾクッ”


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