赤い狼と黒い兎
プロローグ
バキッ、バコッ、と人を殴る音が聞こえる。
薄暗い路地裏。
そこには数人の人間達がケンカをしていた。
どうやら、相手は2対5でやり合っている様子。
数が少ないにも関わらず、黒と白のパーカーに身を包みフードを被っている彼らは圧倒的に強かった。
「オイ、弱ぇークセに楯突いてんじゃねーよ。オッサン」
白のパーカーに身を包んだ男が、地面に蹲っている男を蹴る。
するとその男は、小さく「ゔっ…」と唸り声を上げた。
「オレらを誰だと思ってる?」
「…WolfMoonをナメてんじゃねーよ」
今度は黒のパーカーを着た男が、寝転がっている男を容赦なく蹴る。
再び、バキッ、バンッと音が響く。
「――黒狼、もうやめとけ。」
そう言って、白のパーカーの男は〝黒狼〟と呼んだやつの肩をグイッと引いた。
「そいつ、もう伸びてる」
降り下ろされなかった足は行き場を失い、静かに地へと付けられた。
〝黒狼〟は「チッ」と舌打ちをし、ポケットに手を突っ込んだ。
「帰んぞ〝白狼〟。…そいつらにもう用はねえ…」
「ああ、分かってるよ」
そして2人は、闇へと溶け込んで行った。
――これは、あたしがまだWolfMoonにいた頃の昔話――…
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