赤い狼と黒い兎
「…で、馨はどうする気なの?」
腕を組んで、眉間にシワを寄せた加奈子がそう聞いてきた。
あたしは首を傾げ、口の端を吊り上げて笑った。
『どうする、って?』
「…分かってるクセに」
『その言葉、そっくりそのまま返すよ』
今度は青夜が溜め息を吐きながら聞いてきた。
「お前、まさか1人で嶽を捕まえる気じゃねぇだろうな?」
『……。』
「1人で!?」
やっぱりな、というように呆れ唯兎は驚きの声を上げる。
「お前1人で行かせられるか。つーか無謀だ」
「そうよ。あんた、昔から嶽には敵わないじゃない」
……昔なら、な。
『あの頃と一緒にするな。嶽はあたしが絶対に潰す』
アイツを潰すためなら、命をも投げ出す。
そのくらいの覚悟はしてる。それに、
『あたしが自分の手でアイツを殺らねぇと気が済まねぇ…』
右手をぎゅっと握り、理性を抑えた。
「…馨の気持ちも分からなくはないが、1人で嶽のところに行くのは無謀過ぎる」
「そうよ。何でも1人で解決しようとするの止めなさい。なんのためにmoonや私達が居るのよ?」
加奈子に緩くデコピンをされ、額を押さえた。
「何でも1人で背負い込むの、馨の悪い癖だぞ!」