赤い狼と黒い兎
にかっと歯を見せて笑う青夜につられて加奈子も笑う。
「なんのための同盟だ!いざとなったら朱雀だって力を貸すぞ?」
あまりに嬉しい言葉だけど、あたしには有り難くない。
『…、……。』
言おうとした言葉を飲み込み、口を閉じた。
巻き込みたくない、傷付けたくない。
そんなことのために、moonや朱雀、他の同盟や傘下を動かしたくない。
…これがあたしの本心だが、言っても聞かないのがオチだ。
でも、傷付けさせたくない。
『……1人では、乗り込まないよ…さすがに』
そう言って、苦笑いしておいた。
「どうだか。馨は昔っから単独行動ばっかじゃない!」
『…だって他人と一緒だと動きにくいし…』
「社会に出たらそんな事言ってられないわよ!」
『なんか急に先生になったんだけど……』
冗談めいた説教をくらい、溜め息を吐いた。
すると保健室にぞろぞろと人がたくさん入って来た。
「馨!腕大丈夫!?」
「痕!痕残ってないよね!?つーか残らないよねぇ!?」
『………。』
またウルサイの来たなぁ…。
なんて、ぼーっと見ていたら亜稀羅が目の前に来た。