赤い狼と黒い兎


『あき…?』



怒られるかなぁ…。あ、また瑠宇に小言言われそうだなぁ…。



「馨、昔から変わらない」

『へ……』



急にそんなこと言い出すもんだから、思わずすっとんきょな声を出した。



「…馨の無意識って怖い」

『……あき、あんた瑠宇が乗り移った?』

「あれと一緒にするな」



…兄貴をあれ呼ばわりだなんて…。

一応兄貴なのに……。



「で、馨。」

『何』

「どうするんだ?」



腕を組んで不思議そうな顔をする青夜。

…全員集まってるから今ここで言えってか。



『……』

「馨、あたしら…嶽の事ならもう大丈夫だよ」

「うん。さっきはちょっと取り乱しちゃっただけで…」



大丈夫、そんなの言葉ならいくらでも言える。

気付いてないの?

みんな、手が、震えてるんだよ…。



『…何が?』

「へっ?」

『だから、何が大丈夫なの』

「何、って……」



困惑する顔にあたしはただじっと見つめた。



「…精神的、に?」

『聞くな。』

「だ、大丈夫だって」

『平常心を保とうとしたって本人を目の前にしたら使い物にならない』

「馨!」



加奈子に制止をかけるように咎められるが、あたしの言っている事は事実。



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