赤い狼と黒い兎
女嫌いなワケ
そして、あたしは向日葵の病室前にいた。
深子と磨子には用事だけ済ませて、こっちに来たけど…。
(急に来て大丈夫か…?)
今さら引き返すなんて面倒な事はしないが、女嫌いの向日葵だからなぁ…。
というか、看護婦とか大丈夫なのか?
とりあえず、ずっと突っ立ってるわけにもいかないからノックをしてから入った。
『あ、なんだ。起きてんじゃん』
「………」
向日葵は心底驚いた顔をし、ベッドから起き上がった。
「お前…何で……」
『え?んー…様子見に?』
「…どうせついでだろ?」
『えっ、誰の?』
きょとんとして言えば「は?」みたいな顔をする向日葵。
「…まぁいい。何か用か?」
椅子をすとんと座り、単刀直入に聞いた。
『向日葵って、何で女嫌いなの?』
そう聞くと、目を大きく見開き次には眉間にシワが出来ていた。
「何だよ急に…。お前に関係ねぇだろ…」
『ないね。…でもさ、いつまでも“偽り続ける”のって…疲れない?』
「!?」
じっと向日葵の顔を見つめていれば、パッと目を逸らす。
「……」
『ま、無理には聞かない。言いたくなったら……』
立ち上がり、帰ろうとすれば向日葵があたしの手首を掴んだ。
震えた手で、でも強く…。