赤い狼と黒い兎
幸せ逃げるわあ。
…逃げる幸せもないけどね。
「ここよ」
加奈子が止まった教室。上を見上げれば「2−C」と書かれていた。
…C組、か。
「呼んだら入って来てちょうだいね」
『ん。…早くしてね』
加奈子はにこりと笑い、静かな教室に入って行った。
…静かだなあ、ほんと。人いるの?
不良学校とか言って、ほんとは真面目集団とかだったりして。
あ〜、そんなんヤだなあ。あたし完璧浮くじゃん。
銀髪に黒メッシュ、金と赤のオッドアイという奇妙な目色。
目立つことこの上ない。ああ、でも。
『(朱雀がいるんだっけ…)』
確か、今は8代目なハズだ。
「どうぞー」
加奈子に呼ばれ、静かな教室へと足を運んだ。
『!』
真面目集団かと思ったけど、そうでもないみたいだ。
色とりどりの頭に目。女もいるし?
「では、自己紹介お願いします」
『…有栖川馨』
そう名前だけ告げれば、男は目の色を変え、女は明らかに興味無さげな顔をした。
あたしだって女に
興味ねぇよ。
「じゃあ、馨さんの席はあそこですよ」
痛いくらいの視線を浴びながら、自分の席についた。
…てか、周りが空席過ぎて逆に嫌なんですけど。
「はい、授業始めるわよ〜」
加奈子がチョークを持った瞬間に、ガラガラと前扉が開いた。