赤い狼と黒い兎
あたしは、小さく気付かれないよう溜め息をつき椅子に座り直した。
『…無理しなくていいんだよ?』
「……いい」
『向日葵がいいなら何も言わない。自分の話したいタイミングでいいよ』
「……」
向日葵はゆるりとあたしの手を離し、少し、深く息を吸った。
「…俺ん家、母親が居なくてさ」
『うん』
「親父が、育ててくれてたんだ。もともと遊び人だった親父は、俺がでかくなるにつれて家に女連れて来るようになった…」