赤い狼と黒い兎


「だから、女が嫌い」

『………。』



言葉が、見つからなかった。

いや、なんて言っていいのかわからない、の方が正しい。

掛けていい言葉がわからない。

可哀想だね、は違う。
辛かったね、も違う。

…こんなに、言葉で悩んだのは初めてだ。

それくらい向日葵の話は、複雑な感情が入り交じる。



「……何で、」

『…え?』

「何で、お前がそんな顔してんだよ…」



そんな事を言われても、自分の顔を自分で見る事は出来ない。

故に、自分がどんな顔をしているのかもわからない。



『…どんな顔だよ』

「なんか、怒ってるような…悲しんでるような……よくわかんねぇ顔」

『………』



あたし、そんな顔してたか…?

いやま、わかんないんだけど。



『……なんか、ごめん』



やっぱり、一番に出てくる言葉はそれだった。



「は……?」



急に謝ったあたしを、向日葵は怪訝な顔で見詰めた。



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