赤い狼と黒い兎


『本当は、言いたくなかったのに…無理に聞いて……』



自然と俯く、自分の顔。



「…バッカじゃねーの。顔、上げろ…」



言われた通り、顔を上げれば向日葵は違う方向を向いていた。

ほんのり顔が赤いのは、気のせい…か?



「俺が、自分で決めてお前に話したんだ。別に無理矢理じゃねぇし…」

『……でも、』

「でもじゃねぇよ。お前が話せっつったんだろ」

『………』

「何お前。何でそんなしおらしいの?」

『……いや、だってさ』



歯切れの悪いあたしに向日葵は溜め息を吐き、手を差し出してきた。



『?』

「手」



…なんだ、出せってか?

恐る恐ると手を出せば、ぎゅっと握ってくる。



『??』

「…やっぱり、」

『は?』

「お前は、大丈夫なんだよ……」

『は、……。』



なるほど、そういうことか……。



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