赤い狼と黒い兎
女に触れるのにすら嫌がる向日葵が、自分から手を差し出す。
それは、自分が大丈夫だと思う人間だけ。
『…あたし女だと思われてない?』
「いや!女だろ、お前」
『うん、女だけど。だって向日葵さ…』
「…知るかよ。俺だって不思議なんだっつの」
『……』
「でも、たぶんさ…」
視線を握られた手から、向日葵に移せば向日葵は手を見詰めていた。
「お前が…フツーの女と違うからじゃねぇ?」
『…あたしフツーじゃないと?』
「族の頭やってる女がフツーに思えるかよ」
『見た目だけじゃわかんないよ』
「お前の場合、男装だしな」
『…正装だ、あほ』
そう言えば向日葵は、ニカリと歯を見せて笑った。
…あ、初めて笑った顔…見た…。
嬉しくて、ついつい頬が緩んだ。
『向日葵』
「ん?」
『何かあったら言ってね。話、聞くから』
聞くことなら、出来るから。
「…おう、」
『向日葵は向日葵だから、誰も否定しない。みんな、居るでしょ?』
「……」