赤い狼と黒い兎
『もう、偽らなくていいから。…疲れたでしょ?気休めかもしれないけど、あたしの前くらいは…ね?』
そう向日葵に笑いかければ、泣きそうな悲しそうな顔をした。
「……馨」
『!…はい』
初めて、名前呼んでくれた。
嬉しくて、ぎゅっと強く手を握った。
向日葵は片眉を下げてにこっと笑った。
「…ありがと、馨」
『何もしてないよ、あたし』
「俺にとっては十分してくれたよ」
『じゃあそういう事にしとく』
それからひまとは他愛ない話をしてから、あたしは家へ帰った。