赤い狼と黒い兎
バカみたいな漫才を見せられ、加奈子は溜め息を吐きやる気無さげに彼らを見た。
…そのやりとりもいい加減飽きてきたけど。
女子は目をハートにさせて見てるし、男は…まぁ尊敬の眼差し。
「とにかく!俺らには優秀な家庭教師がいるから大丈夫だって」
「「だから自分でなんとかしろって」」
「な!大丈夫だろ、加奈子チャン」
「先生よ。…ったく、それで進級出来ませんでした。ってなったら爆笑してやるから」
「「マジかっ!」」
そののほほんとした空気にみんなが笑い、加奈子は苦笑いを溢した。
…何これ、くだんな。
あたしは窓の外に視線をやり、欠伸を溢した。
「…あれ?見ない顔だね」
目を瞑り掛けた時、黒髪にピンクメッシュをした“朔弥”くんがそう言った。
それに、あたしはちらりと横目にそっちを見た。
「お?ほんとだ」
「お……女……」
…何だよ、女だよ。ってか、何そのあからさまな態度。
分かりやすすぎだろ。
「何?転校生?加奈子チャン」
「そうよ」
「こんな時期に?珍しいな」
…別に来たくて来てるわけじゃないし。
会話に耳を傾けながらも、一切そっちを見ることはしなかった。