赤い狼と黒い兎
『…まぁ、無事ならいいよ』
「馨…ごめんね…」
そう言ってティッシュで頬から垂れる血を拭く。
『何が?』
「けが……っ」
「馨ちゃん、頬っぺた!」
磨子が慌てたようにやって来て、切れた頬に絆創膏を貼ってくれた。
『ありがと。これくらい大丈夫だから』
「…っごめん。うちが弱いばっかりに……っ」
『バカ。弱いとか関係ない。多分、弱ってる深子や磨子を狙ったんだ』
「…あれうちも?」
苦笑いして頭を掻く磨子に、小さく溜め息を吐いた。
『当たり前だろ。…向日葵の病室には唯兎が居るから多分大丈夫だと思うけど……』
「心配だし、一応見に行こっか」
深子に続いて立ち上がり、磨子も一緒に向日葵の病室に向かう事になった。