赤い狼と黒い兎


『…深子たちの病室行ったらね、黒ずくめの男がいて…』

「うん」

『深子の首、絞めてたの。それでその黒ずくめが驚いて深子から手を離したのはいいんだけど』

「うん…」

『あたしが出入口にいたのが邪魔だったらしく、ナイフ出して…』

「切られたんだ…」

『切り傷程度だよ。すぐ治る』



向日葵の腕があたしの頬に伸びてきて、ケガをゆるゆると撫でた。



「馨、女の子だよ。顔に傷作っちゃダメでしょ」

『不本意ながらね』

「まったく…。馨はいつもそんなんだよ」

『??』



訳がわからず首を傾げていたら、向日葵は苦笑いした。



『ひま…』

「無理すんなってこと!」

『…どうかな』

「1人で片付けようとしないこと」

『……』

「今回のことも、自分でなんとかしようって思ってるでしょ?」



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