赤い狼と黒い兎
あたしはただただ、嶽を見つめるしか出来なかった。
嘘だ、違う。
そう自分に暗示をかけて。
「嶽!てめぇ、俺らを裏切った事許さねぇぞ…!!」
え……。
裏切った…?
『嘘だ……』
「あ?何言ってんだよ、瑠宇」
そうだ…嘘、だよね…?
「元は瑠衣が悪りぃんだろ?」
瑠衣…?
「俺の女、寝取ったクセによぉ…」
「…っだから!」
「言い訳はもういいぜ?瑠衣」
「嶽!」
……嶽の、彼女…?嶽に、彼女…居たんだ…。
って当たり前か、居ても…おかしくないよな……。
『……っ』
そうだよ、居てもおかしくないんだから。悲しむ必要なんてないよ。
なのに、どうしてあたしの目から涙が溢れるんだろう。