赤い狼と黒い兎
あたしに何かを思う余裕なんてなかった。
だから、全部の事に反応が遅くなっていた。
「なァ、馨?お前何で泣いてるよ?」
『……』
「怖すぎて喋れませんとか?お前がそんなヤワなわきゃねぇよなァ?」
どうして、ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべてるのに
悲しんでるように見えるのかな…。
あたしの目、おかしくなったかな。
「おーい、生きてる?ま、どっちでもいんだけど」
…悲しいの?嶽。
辛いの?ほんとは、こんな事したくないって思ってる…?
『……いね…』
「あ?」
『悲しいね、嶽…』
「……」
嶽の目が驚きに満ち溢れ、見開かれた。
『誤解だよ。…ねぇ、瑠衣の話ちゃんと聞いてあげて?話聞かずに突っ走っちゃうの、嶽の悪い癖だよ』
「……せぇ」