赤い狼と黒い兎


あたしに何かを思う余裕なんてなかった。

だから、全部の事に反応が遅くなっていた。



「なァ、馨?お前何で泣いてるよ?」

『……』

「怖すぎて喋れませんとか?お前がそんなヤワなわきゃねぇよなァ?」



どうして、ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべてるのに

悲しんでるように見えるのかな…。

あたしの目、おかしくなったかな。



「おーい、生きてる?ま、どっちでもいんだけど」



…悲しいの?嶽。

辛いの?ほんとは、こんな事したくないって思ってる…?



『……いね…』

「あ?」

『悲しいね、嶽…』

「……」



嶽の目が驚きに満ち溢れ、見開かれた。



『誤解だよ。…ねぇ、瑠衣の話ちゃんと聞いてあげて?話聞かずに突っ走っちゃうの、嶽の悪い癖だよ』

「……せぇ」



< 155 / 286 >

この作品をシェア

pagetop