赤い狼と黒い兎


ククク、と喉を鳴らして笑いあたしに近寄って来た。

あるだけの力を振り絞って、起き上がろうとした。



「さぁて、どっから傷付けてやろーか」

『うッ…』



首を捕まれ、そのまま持ち上げられる。



『ぐっ…う…っ』

「顔か?それとも足か、腕か…ぎゃははははっ!!」



ツー…と、頬に冷たい感触が伝わってきた。

ああ、切られてる…。

自分の脳はそう冷静に思っていた。



「馨!!」

「馨ちゃん!」

「嶽、やめろ!!」



嶽は、多分、みんなの反応を見て楽しんでる。

あたしには、そう見えた。

…じゃあ、シナリオにない事をしたら、どうなるかな…?



ガンッ!

「ぐはっ!!!」

『うぐ……ッ』



嶽の顔面に足蹴りした反動で、持っていたナイフが腹に刺さった。

くそ…これは想定外だ……っ



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