赤い狼と黒い兎


「そのうざってぇ口、二度と開けねぇようにしてやるよ」



ニヤリと口角を吊り上げる。

あたしの言葉、今の嶽には届きませんか…。

何を言っても、もう、ダメですか……っ



『……っ』

「おぉ?命乞い?」

『違っ…』



また涙。

一体なんの涙。

言葉が届かないのが悲しいのか。

…一理あるかもしれないな。

あたしなんかじゃ嶽は止められないのか。

じゃあここで、大人しく嶽に殺られた方が賢明な判断なのかな。



『……悲しいよ、嶽』

「安心しろ、すぐ楽にしてやるから」



…それで、楽になるのかな。

大好きな人すら救えない自分に、楽はあるのかな……。

ねぇ、嶽……。



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