赤い狼と黒い兎


『楽しかった、あの日に…戻れないのかな…。ねぇ嶽…嶽は、楽しく、なかった…っ?』



自分の身体を仰向けにさせ、嶽を見つめた。



「………」

『がく…っ、前の優しい嶽に…戻ってよぉ…!』

「…っうるせぇ!!!!」



再び降り下ろされたナイフに、あたしはぎゅっと目を瞑った。



『……?』



でも、いつまで経っても痛みは来ず恐る恐る目を開いた。



『!!?、る…るい…?』



あたしに背中を向けて、庇っている瑠衣。

その足元にはポタポタと血が垂れ落ちる。



『瑠衣…!!』



ゆっくりと、スローモーションのように傾き倒れる瑠衣のカラダ。

それを支えようと、痛むお腹を無視して起き上がった。



『……っ』



受け止めた衝撃で、腹に激痛が走り自然と顔を歪んだ。

それより瑠衣……!



< 161 / 286 >

この作品をシェア

pagetop