赤い狼と黒い兎
『楽しかった、あの日に…戻れないのかな…。ねぇ嶽…嶽は、楽しく、なかった…っ?』
自分の身体を仰向けにさせ、嶽を見つめた。
「………」
『がく…っ、前の優しい嶽に…戻ってよぉ…!』
「…っうるせぇ!!!!」
再び降り下ろされたナイフに、あたしはぎゅっと目を瞑った。
『……?』
でも、いつまで経っても痛みは来ず恐る恐る目を開いた。
『!!?、る…るい…?』
あたしに背中を向けて、庇っている瑠衣。
その足元にはポタポタと血が垂れ落ちる。
『瑠衣…!!』
ゆっくりと、スローモーションのように傾き倒れる瑠衣のカラダ。
それを支えようと、痛むお腹を無視して起き上がった。
『……っ』
受け止めた衝撃で、腹に激痛が走り自然と顔を歪んだ。
それより瑠衣……!