赤い狼と黒い兎
加奈子にそう言って、あたしは教室を出た。
…てか、亜稀羅の教室って2階のどこだ?
こういうときに便利なのは、ケータイで亜稀羅に電話を掛ければ1コールで出た。
「姉ちゃん?どした?」
『亜稀羅、教室どこ?』
「あー…。今どこ?」
『…3階?』
「疑問系かよ…。ま、いーや。そこ行くから」
返事をする前に、ぶちっと切られあたしはケータイをポケットにしまった。
亜稀羅を待っている間、暇なので窓の外を見ることにした。
――落書き1つ無い、綺麗な校舎。
普通(?)、不良校と言えば窓ガラスはバリバリに割れ、校舎には落書きし放題って感じなのに。
…青夜、怒ったら怖いもんな一応。
「姉ちゃん」
『!』
呼ばれ、振り向けば亜稀羅が立っていた。
『…遅い』
「ごめんごめん。わかんなくて」
でも見付けたからいいだろ?、とにこりと笑う。
……その笑顔に免じて、許す。
「でさ、ちょっと頼み事」
『ん?』
「着いて来てくれる?」
首を傾げながらも、こくりと頷くと手を引っ張られる。
『亜稀羅?どこ行くの?』
「屋上!」
『……何で。』
1トーン低くなったあたしの声に驚いた亜稀羅がくるりと振り向いた。
「馨?」
『………。』
「…まっ、嫌でも着いて来てね。俺からの頼み事は屋上にあるから」
またにこりと微笑まれ、あたしは大人しく引っ張られた。