赤い狼と黒い兎
…あたしは、亜稀羅にかなり甘いと思う。
亜稀羅に頼まれたら、断れない。
それが、人殺しだったとしても。…たぶん。
「はい、着きました屋上〜」
『……頼み事って、何』
若干不機嫌になりつつ、亜稀羅にそう聞いた。
亜稀羅は笑いながら、屋上の扉を開ける。
すると、中からは男女の怒鳴る声が聞こえる。
『…?』
「俺の頼み事っつーのは……」
屋上のど真ん中を見て、あたしは驚いた。
さっきの奴等…朱雀と、あたしがいたチームのメンバー…WolfMoonが言い争っている。
「あいつら、どうにかしてくんね?」
苦笑い気味に言う亜稀羅に、あたしは何も言えなかった。
あたしが止められる立場でもないし、あいつらと関わると何気疲れる。
でも、やっぱりあたしは―――…
『……どうにかって?』
…―――亜稀羅の頼みだから、断れない。
「とりあえず、行こうか」
1歩、2歩と徐々にそいつらと距離が縮まっていく。
すると、あたしがいたチームのやつがあたしに気が付いた。
それによって、言い争いは止まった。
「あ、やっぱ俺の思った通りだ」
亜稀羅は満足そうに笑い、奴等を見た。
…あたしは意味がわからないんですけど。
「馨!?」
「何でここに…。しかも亜稀羅と一緒に……」
「お前らそーゆー関係かッ!?」
「あ゙あ゙!?てめぇら、馨の事呼び捨てにしてんじゃねーよ!!」
「馨にそんな口利いていいと思ってんのか!?」
「ふざけんなよてめぇら!」