赤い狼と黒い兎
今までバイクを弄ってた唯兎が、軍手を外しながら近寄って来た。
「馨が気持ち悪いって」
「ほ?マジで?…大丈夫か馨〜?」
あ〜、大丈夫。別に大したことじゃないから。
って言いたいのに声が出ない。起き上がることも出来ない。
かろうじて動くのは指先と目だけ。
「馨…?」
「んー…こりゃやべーな」
そう言ってソファーの後ろに行くや否や、ゆっくりと起こされる体。
そして唯兎がソファーを跨いで隣に座る。
「どっちが楽?」
『……』
どっちかっていうと、こうやって座ってる方が楽だったりする。
「…座ってる方?」
小さく小さく、わかりにくいような頷きだったのに唯兎には伝わったらしい。
…すごいな。