赤い狼と黒い兎


今までバイクを弄ってた唯兎が、軍手を外しながら近寄って来た。



「馨が気持ち悪いって」

「ほ?マジで?…大丈夫か馨〜?」



あ〜、大丈夫。別に大したことじゃないから。

って言いたいのに声が出ない。起き上がることも出来ない。

かろうじて動くのは指先と目だけ。



「馨…?」

「んー…こりゃやべーな」



そう言ってソファーの後ろに行くや否や、ゆっくりと起こされる体。

そして唯兎がソファーを跨いで隣に座る。



「どっちが楽?」

『……』



どっちかっていうと、こうやって座ってる方が楽だったりする。



「…座ってる方?」



小さく小さく、わかりにくいような頷きだったのに唯兎には伝わったらしい。

…すごいな。



< 205 / 286 >

この作品をシェア

pagetop