赤い狼と黒い兎
ゆるりゆるりと唯兎の手があたしの頬を撫でる。
その手を握ると、ぴくりと反応をした。
『…ひまもだけど…唯兎の手も…温かい…ね』
「……お前が冷た過ぎんだって」
『ふっ…そっかぁ……』
「…あんま1人で背負い込むなよ」
『ん…?』
閉じ掛けていた目を開き、唯兎を見た。
けれど、やっぱりぼんやりとしたシルエットしか わからない。
「……体調崩すって、そういう事だろ?」
『…いろいろ…重なったから……』
「重なった…?」
『いつか…ね…』
少し口元に笑みを作って目を閉じると、すぐに夢の中へと引きずり込まれた。
だから、あたしが寝る前に言った唯兎の言葉がなんて言ったかわからなかった。