赤い狼と黒い兎
−唯兎 side−



「ちょっとくらい、頼れよ……」



規則正しい寝息を立てて、もう寝ていた。

…ぜってー聞こえてねぇな。



「…たく、無防備っつーかなんつーか」



あんま他人関心を持たねぇよなぁ、こいつ…。

それで、周りに人が集まって来んだからすげぇよなぁ……。



「早く気付けよな…あほ」



小さく呟いて馨の頬っぺたに触れるだけのキスをした。

…これ、本人起きてたらやべぇ…

起こさないようにとっとと退散するか…

そっと立ち上がれば何かに捕まれる感覚がした。



「……生殺しですか、馨さん」



引っ張った正体はもちろん馨で。

つーか、この部屋に俺以外入れないから明らかに馨が犯人なんだけど。



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