赤い狼と黒い兎


こんな日々がこれからもずっと続けばいいのにな…。


そんな安易な考えを持ったために、すっかり忘れていた。

“嶽”という奴の存在を…。


――いや、油断しきっていた。

何も無いからと、警戒心と緊張感を和らげていた。

これが、あたしの失態。


アイツは言っていた。

“一時の幸せな時間を与えてやる”

…と


迂闊すぎた。そこで“何もしない”という保証はどこにもない。

本当に、あたしが一時でも“幸せ”と感じてしまえば

舞台の幕は開き、
役者が揃えられる。


あたしは、その役者の1人――…



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