赤い狼と黒い兎
−春架 side−


琉樹から“馨が拐われた”って聞いた時、心臓が止まるかと思った…。

あの馨が…、とも思ったし、またあの時と同じだとも思った。



「馨…大丈夫だよね…?」

「……ん、絶対、大丈夫」



そう、何度も何度も自分に言い聞かせた。

…だって、そうでもしなきゃ、自分を保ってられないから…。



「春架…」

「…大丈夫。行こう」



今のmoonの総長は、あたし。

あたしがしっかりしないでどうする。

変に気取らず、あたしらしく。



「行くぞ!!」

「「「おう!!!」」」



あたしが声を張り上げれば、鼓膜が破れんばかりの大声が帰ってくる。



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