赤い狼と黒い兎
笑顔でひどいことを言う深子に、あたしは苦笑いした。
「屋上、あいつらのテリトリーにしていいのか?」
琉樹があたしの顔を覗き混んでそう聞いた。
『別にいい。ここのトップはあいつらだし』
「あれ、認めんの?」
『認めるも何も…。興味がない』
「ああ。なるほどね」
「なら音楽室行こーよ、かおちゃん!」
「あそこねぇ、ギターとかいっぱいあるんだよぉ」
そう言って絡んでくる双子に溜め息をつく。
『わかったわかった。行くから離れろ』
「「わーい!」」
「相変わらず深子と磨子には弱いな、馨…」
『…しゃーねぇだろ。アレだぜ?』
そう言うとそれもそうか、と納得するみんな。
あいつら双子は、ズル賢くて小悪魔だ。
「「きょーから音楽室はうっちらのテリトリー♪」」
『「「「………。」」」』
最初っから、それが狙いだったわけか…。
騙された……。
「まぁ…音楽室ならいーんじゃね?」
「音楽室、使わねーもんなあ」
「あそこ、冷暖房効くしな?」
…満場一致で、音楽室はあたしらのテリトリーとなった。
何だろ、抜けたのにここにいるって。
「とーちゃっく!」
「…あ?おめぇら何してんだ?ここはうちらの場所なんだよ」
「とっとと出ていきな!」
そのあと、プチ口論が始まったのは言うまでもない。