赤い狼と黒い兎
「そういう事になるね」
「ふぅん……」
「…唯兎、あいつがそんなに気になるのか?」
向日葵は嫌そうな表情を浮かべ、唯兎にそう聞いた。
「ん?んー…何だろうなぁ。…俺にもわかんねぇ。けど、なーんか…なぁ?」
朔弥に話を振るようにして、そちらを見た。
朔弥はメガネのブリッジに手をかけ、興味深そうに笑った。
「気にならない、って言ったら嘘になるかな?」
「……。」
「彼女の本性を暴いた時、どんな表情するか…」
そんなドSな発言をする朔弥に、みんな顔を真っ青にさせた。
「朔弥…」
「悪趣味な…」
「ドS…」
「鬼畜だな…」
「…馨、可哀想に」
その頃の馨はというと―――
『…へっくしょん!』
「え、大丈夫?馨」
「リーダー風邪!?」
「死なないでリーダー!!」
『人を勝手に殺すな。…ただのくしゃみだよ』
「はい、差し入れ」
『だから、ただのくしゃみだって!』
風邪だと思われ、みんなから病人扱いされていた。
(くそ…。人の話し聞いちゃいねーよ)
なんともありがた迷惑な優しさを受け取った馨だった―――