赤い狼と黒い兎


思わず聞き返してしまった…。

離れさせねぇって…。



「…馨、好きだよ」

『っ!』



そう言われた瞬間に、あたしの片目からは涙が流れた。

“好きだよ”の言葉が、嬉しくて。

改めてあたしは唯兎が好きなんだと自覚した。

そっと唯兎の腰に腕を回す。



「……馨は?」

『…言ってほしい?』



そんな風に言えば、唯兎は少し体を離して言った。



「言って?」

『……この状態で?』



面と向かって?

唯兎に言うの?



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