赤い狼と黒い兎
「ごめんごめん!言う!言うよ!だから殺気しまってっ!!」
冷や汗をかきながら、焦る兄貴に溜め息をついた。
『…もう一度聞く。用件はなんだ』
「えっとー…」
『あたしの睡眠を邪魔したんだ。それくらい大事な事だよなあ?瑠宇』
「………。」
ダラダラと冷や汗が滝のように流れ始める。
黙ってないで言えよ。どんだけここで時間使うの。つうか、脅しすぎたか?
「…えっと、ですね」
『うん、何?』
敢えて、優しく問い掛ける。…つもりだ。
「馨には、…学校へ通ってもらいます!」
『はい、却下。用はそれだけ?うわ、最悪』
再びベッドへ潜り、就寝しようとするあたしを兄貴は慌てて止めた。
「ちょっ、待てって!」
『…んだよ。あたしに待てだと?』
「いや、あの…ごめんなさい…!」
ガン睨みすると、土下座する勢いで謝るクソ兄貴。
なんなんだよ、こいつ。何がしてーんだよ、マジで。
「兄貴?…何やってんの?」
「あ…亜稀羅…!!」
救い、とでも言いたいのかクソ兄貴。
目に涙をうっすらと溜め、亜稀羅を見る。
有栖川 亜稀羅。あたしの弟で、すっごい優しくてかっこかわいいの。
兄貴ほどのブラコンではないが、亜稀羅は大好きだ。…瑠宇も嫌いではないが。