赤い狼と黒い兎
「誰かがキミの情報を操作してる、としか考えられない」
『……それで?』
「龍希がさっき言った通り、キミは一体何者なの?」
見透かすような、鋭い視線を浴びあたしは少し笑った。
『それにお答えは、出来ません』
それに、みんなは驚くようにして目を見開いた。
「さっき…答えるって…」
『バカにも程があるよ。あたしは“応える”って言ったんだよ。“答える”とは一言も言ってない』
「は…?」
「…なるほどね」
朔弥はいち早く理解メガネのブリッジに指を置いた。
「話せない、という事は人には言えないような事なんだね?」
『……どういう解釈をしてくれてもいいよ。そう思いたいなら、思えばいい…』
ニヤリ、と口の端を吊り上げ笑った。
『これだけ?もういい?』
そう言って立ち上がると、向日葵がさっと立ち上がった。
「おい」
『何』
向日葵の顔を見ると、何かを覚悟したような表情をしていた。
けど、相変わらず綺麗な茶色の目は黒く濁っていた。
「俺と勝負しろ。」
「はっ!?」
「何言ってんだよ向日葵…」
「相手は女だぞ?」
上から順に、向日葵、龍希、唯兎、郁が言った。
「女だって喧嘩出来る奴いるだろ」
「そうだけど…」
「何のために……」
向日葵は拳をぎゅっと握り、あたしに言ってきた。