赤い狼と黒い兎
「俺にはコイツが普通の女だとは思えねぇ。あの“狼月”と一緒に居るんだぞ?」
「まぁ…確かに…」
「ただ者じゃねぇだろ。ただの女子高生で通されると思ってんのか」
お察しの通りで。
向日葵の言う通り、あたしはそんじょそこらの女共とはケタが違う。
自分で言うのも、なんだがね。
WolfMoon――…通称“狼月”“moon”
人によって呼び方は様々だが、同族…つまり暴走族やレディースの奴等は“狼月”と呼ぶ。
“moon”と呼ぶのは、それに近いメンバーだけ。
亜稀羅と瑠宇は別として、メンバー、同盟、傘下が“moon”と呼ぶ。
「…女相手に、やめた方がいいと思うけど?」
亜稀羅が呆れたように、溜め息をつき向日葵に言った。
「うるせぇ……。…俺がやるっつってんだ、黙ってろ」
「……。」
あたしはそれを見て、ニヤリと笑った。
いい度胸だ、あたしを“コイツ”呼ばわりするくらいだもんな?
それなりに強い、…ハズだろう。
『いいねぇ、その底知れぬ自信!…そんなに相手して欲しいなら、してあげるよぉ♪』
猫なで声で目を細めてそう言った。
――…榛葉向日葵、いったいあたし相手にどれだけ持つかな…?
「おい…馨!」
『ん〜?なんだい亜稀羅?』
にこり、笑みを見せれば亜稀羅はぐっと口を閉じた。